矢沢洋子 連載「週刊 矢沢洋子」 - 【第3回】特別師弟(妹?)対談 矢沢洋子×會田茂一
掲載日:2010年9月8日
はてなブックマークに追加
 第3週目を迎えた『週刊 矢沢洋子』。今回はアルバム『YOKO YAZAWA』の収録曲、「月光」と「fade away」の2曲でアレンジを手掛けた“アイゴン”こと會田茂一との対談をお届けします。FOEHiGEのメンバーにして、木村カエラBONINIE PINKの楽曲を手掛ける名プロデューサーとして知られるアイゴンは、実は知る人ぞ知るヘヴィなE.YAZAWAファン。レコーディングのことから、出前のことまで(笑)、和気あいあいと盛り上がった師弟(妹?)対談をお楽しみください!
「アイゴンさんとはオッケーのラインが同じだったし、すごく波長が合いました」(洋子)
――まずは、アイゴンが洋子さんのアルバム『YOKO YAZAWA』にアレンジャーとして携わったきっかけから聞かせてください。
 會田茂一(以下、會田)「以前から知り合いってわけではなかったんです。実は以前、CDJournal.comの矢沢永吉さんの記事に僕が出させてもらって、どうやらそれを事務所の方が見てくださったみたいで。それが直接的なキッカケかどうか分からないですけど、ある日、お話をいただいたんですよ」
――そうだったんですか。言ってみれば、アイゴンが昔から抱いてる“永ちゃんLOVE”が洋子さんの仕事につながったと。
 會田 「そうだとしたら嬉しいです(笑)。でも、最初オレなんかが洋子さんの作品に携わっていいのかなと思ったんですよ。でも洋子さんと初めて話したとき、ルースターズとかマキシマム ザ ホルモンとかも聴くっていわれてビックリして。これは共通項、接点があるはずだと思いましたね」
 矢沢洋子(以下、洋子) 「アイゴンさんと初めてお会いするときは、怖い人だったらどうしようとか緊張してたんです。だけど、ほんとに柔らかい優しいオーラに包まれたような人で。だから安心して一緒にスタジオで作業できましたね」
――アルバムの中では、スローな「月光」とミッド・テンポの「fade away」をアイゴンが手掛けてますが。
 會田 「何曲か聴かせてもらってビビッときたのがこの2曲だったので、アレンジの方向性は最初から迷いはなかったですね。僕の中では<月光>がイギリス寄りのイメージで、<fade away>は思いっきりアメリカの西海岸的なイメージで録ったんです」
 洋子 「特に<月光>は、月イチでやってた<Naturalythm>というアコースティック・ライヴでも1年くらい前から歌ってきてた曲なので、レコーディングのときは割とスムーズにいきましたね」
――アイゴンから見て、レコーディングでの洋子さんの印象は?
 會田 「ホント、キーが半音変わるだけで声の表情が変わるんですよ。ストイックに“違うな”って何度も歌い分けてたのが印象的でした。“半音高いところで歌うから練習する”って自分の歌に対する掘り下げ方が、オレみたいな甘ちゃんと違うなって(笑)」
 洋子 「いやいや(笑)。基本は私も“まあいいか”主義なんですけど、やっぱり自分の曲はしっかりやらないとマズいなと思うんで(笑)」
──アイゴンとのレコーディングはいかがでした?
 洋子 「作業が早いと思いました。いい意味で無駄なことに時間をかけないなって。ホント順調に進めた感じがします。もし私が性格的に練って練ってって感じなら違ったかもしれないけど、私も“なるようになるさ”ってとこがあるので(笑)。もちろんいいと思わなきゃダメだけど、オッケーのラインがアイゴンさんとは同じだったし、すごく波長が合いました」
――相性が良かったんですね。ではレコーディング以外で、スタジオではどんなエピソードがありましたか。
 會田 「出前のごはんのこととか、ツイッターのこととか、そんな話しか覚えてないような感じで(笑)」
 洋子 「それくらい和気あいあいとやってたんです(笑)。アイゴンさんに勧めてもらって、ツイッターを始めたのは私にとって一大イベントでしたよ(笑)」
 會田 「録音してるときに、勢いでフォローしあったんです(笑)」
 洋子 「私のほうが随分あとにツイッター始めたんだけど、すごい勢いでつぶやくからアイゴンさんのツイート数を軽く抜いちゃって(笑)。そういえば、アイゴンさんあまりつぶやかないですよね」
 會田 「僕はシウマイ弁当食べないとつぶやかないんで(笑)」
 洋子 「(笑)。あと絶対ツイートの終わりに“〜オジサン”って書きますよね」
 會田 「“〜なう”って使うのが僕の中で違うかなと思って、“なう”の同義語で“オジサン”って使ってるんです(笑)」
 洋子 「いいな、私も何か作ろうかな(笑)」
 會田 「“〜ヨーコだぜ”とかつけますか(笑)? まあ、こんな感じで話しながらレコーディングしてたんです。そういったコミュニケーションを通じて、洋子さんの指向するサウンドを嗅ぎ取ったり(笑)」
 洋子 「嗅ぎ取られてたんだ(笑)」
 會田 「割とエンジニアさんと作業するときとか、2時間くらい話してからの方がガーッと作業できたりするし、そういう時間も必要かなと思ってるんです。単にダラダラ喋って時間を無駄にしたらディレクターさんに土下座しなきゃいけないけど(笑)。でも楽しく話して、作業するときは集中してできたのはよかったなって」
──ちなみに、出前のごはんはどんなものを食べたんですか。
 洋子 「初日はバリ島のお弁当でしたね」
 會田 「赤坂にジュンバタンメラってインドネシア料理屋さんがあってデリバリーもしてくれるんですよ。僕が見つけて都内のスタジオにメニュー配って回ったんで、僕が広めたような(笑)。そこはいいですよ。辛いんですけどね。実は昨日も食べたんです(笑)」
 洋子 「(笑)。あとは、近所にある定食屋さんに頼んだり。やっぱりスタジオって籠りがちになるんで、食事が楽しみですもんね。いろいろ頼んだけど、でも私、スタジオでピザ頼んだことないかも」
 會田 「ピザは結構盛り上がりますよ。サイド・メニュー頼み過ぎちゃったりしてね(笑)。スタジオで、たまにケータリングで出張してごはん作ってくれるとこもあるじゃないですか。便利だけど、自分的に面白みがなくなるような。やっぱり、いろいろ食べ物の種類はあった方がいいなって。といいつつ、僕はシウマイ弁当さえあれば他はいらないってくらいシウマイ弁当が好きなんですけどね(笑)」
 洋子 「確かに美味しいですよね(笑)」
――アイゴンのベストのシウマイ弁当はなんですか?
 會田  やっぱり、崎陽軒のスタンダードな780円のシウマイ弁当がベストですね。僕の場合は、できたてよりちょっと時間が経ってる方が好きなんです」
 洋子 「マニアックすぎる〜(笑)」
 會田 「あと気をつけてほしいんですけど、崎陽軒じゃない漢字の焼売弁当が品川の新幹線のホームにあって引っ掛かる人多いですね」
 洋子 「味は違いますか?」
 會田 「全然違います。でも、むしろそっちの方が旨いって人もいるんですけど(笑)」
――(笑)。洋子さんがこれでテンションアゲるぞって食べ物はありますか?
 洋子 「基本なんでも食べるんですよ。テンションアゲるとは違うけど、生ハムとかサラミが好きですね。あとチーズが好きです。友達と食事に行くと、絶対チーズの盛り合わせを頼んじゃうんです。ブルーチーズがないと怒りだすくらいすごく好きで(笑)。あと焼き鳥も好きだし。嫌いなのはパクチーですね。あれは無理ランキング1位なんですよ」
――意外ですね。女の人パクチー好き多いですよね。
 洋子 「多いですよ。でも、あれだけは口に入れたくない唯一のもので」
――じゃあトムヤムクンとか出たら。
 洋子 「ダーって引っくり返しますよ(笑)。ベトナムのフォーにも入ってるじゃないですか。食べに行ってるくせに、パクチー入ってると“先に抜くかどうか聞いてください”って文句言ったりして(笑)」
 會田 「僕は飲み物だとドクターペッパーが好きなんですよ。スタジオの自販機に入ってるだけで安心しますね。一時期なかったけど最近復活して嬉しいかぎりで(笑)」
 洋子 「私はライヴ前に必ずリポビタンD飲んでテンションアゲますね(笑)」
 會田 「(笑)。今ってレッドブル飲む人多いですよね。すごく元気出るって」
 洋子 「私はあれは味があんまり好きじゃないんですよね。レッドブル・ウォッカは、酔うけど次の日大丈夫だっていいますよね」
「レコーディングのとき洋子さんに“ムリピーでいこう”って言ったら“?”な顔に(笑)」(會田)
――かなり酔いそうですけどね(笑)。では話題を変えて、洋子さんは最近DJを始めて、CDJの機材も買ったそうですが。
 洋子 「大枚はたいて買いました(笑)。友人がイベントやるときにDJで呼ばれて回したりもしましたよ」
 會田 「僕もDJやるけどヒドいんです。強制チーク・タイムっていって<メリージェーン>かけてフロアに降りていろんな人と踊ったりして(笑)。ちなみに洋子さんはどういうのかけるんですか?」
 洋子 「基本的にロックをかけるけど、でもこの間どうしてもかけたかった曲があったんです。最初はルースターズ、ミッシェルとか普通にかけて、そこから今、私の推し曲、プロアクティブのCMで流れてるSHYさんの曲(「ラッキーカラー」)をかけて(笑)。みんな、“お?”ってなるけど、ドヤ顔でしたね(笑)」
 會田 「(笑)。それはファッションでいうところの“外し”の感覚ですか? それともこれで踊れっていう提案みたいな感じですか(笑)?」
 洋子 「いやもう、単に私が聴きたい、“どうだ!”って感じだけですね(笑)。あと私、着メロも女の人からはSHYさんの曲にしてて、男の人はパチンコのCMの角田信朗さんの曲にしてるんですよ(笑)」
 會田 「勉強になります(笑)!」
――アハハハ。音楽的な話題に戻すと、今度もしアイゴンが洋子さんをプロデュ〜スするならどんな曲をやってみたいですか。
 會田 「オーセンティック・スカみたいな曲をやってみたいですね。ガシッと歌い上げつつ、音はノリノリってのがカッコいいんじゃないかなって」
 洋子 「楽しそう! そのときは思いっきりふざけた格好したいな」
 會田 「どこまでのふざけ感ですか(笑)。レッドブルの服とか?(笑)」
 洋子 「いやいや(笑)。でも“え、そんな格好するの?”とか意外な感じでやりたいです」
 會田 「案外、和服とかいいかもしれないですね」
──レコーディング中に他にはどんな音楽の話題が出たんですか?
 會田 「僕は矢沢さんの言葉をよく使わせてもらってるんですよ。ついついスタジオで口をついて出てしまう“ムリピーで”って言葉があるんです。無理してピーハツ(ハッピー)で行こうっていう意味で。映画『RUN&RUN』の中で、アンコールのときに“ムリピーでいこう”って言葉が飛び交うシーンがあるんです。今回のレコーディングのときも、洋子さんに“ムリピーでいこう”って言ったら“?”な顔になったんで、実はお父さんが映画でこういうこと言ってたんですよって説明したんです(笑)」
 洋子「(笑)。お父さんの独特な用語ってあるじゃないですか。小さい頃から家では普通に使われてたんですよ。……皆さんシャバダバって使いませんか?」
 會田 「僕は使うけど、普通は使わないと思います(笑)」
 洋子 「シャバダバは、いっぱいいっぱいでワーッてなってる状態のことです」
――なるほど(笑)。では、アイゴンから見て、洋子さんの中に感じるロック魂みたいなものってありますか?
 會田 「さっき言った、レコーディングで垣間見たストイックさとか、会話してるときにパッと感じる目力みたいなものはすごいです。ホントはライヴする機会があったら一緒にやってみたいですね。僕らが矢沢さんの作品から受け継いでるロック魂と、本当の血で繋がったロック魂、そこを発火点に面白い作品ができたらいいなと思うし」
――ホント、おふたりの続きの展開が見てみたいです。アイゴンのバンドに洋子さんがゲストで参加とかも面白そうだし。
 洋子 「そのときは、私も付け髭して出ようかな(笑)。でも、私もぜひやりたいです」
 會田 「ぜひぜひ。もし無理なら最悪DJからで(笑)。オレ<アイ・ラブ・ユー,OK>で強制チークタイムやっちゃうかも(笑)」
 洋子 「じゃあ私もSHYさんの曲持っていこう(笑)」
取材・文/土屋恵介(2010年8月)
【會田茂一プロフィール】
1989年、明治学院大学在学中よりライヴ・サポート、レコーディングなど、ギタリストとしての活動をスタートさせる。その後、朝本浩文とのRAM JAM WORLD、LOW-IQ 01とのACROBAT BUNCH、柚木隆一郎とのEL-MALOなどの活動を経て、1999年、佐藤研二(b)、小松正宏(ds/from bloodthirsty butchers)とともに、ソロ・プロジェクト、FOEをスタート。2003年にはベーシストの高桑圭(GREAT3)とHONESTYを結成。また1997年頃からプロデューサー、アレンジャー、リミキサー、映画の音楽監督としての活動も本格的に進め、高い評価を得る。2010年3月よりロック・バンド、HiGEのギタリストととしても活動している。

■會田茂一10inchアナログ限定ソロ・アルバム 
※9月12日発売
『Pink Grenade』
(GTAS-34 税込2,000円)
會田茂一が出演するライヴ会場、浅草の洋服店スリーラバーズ、會田茂一オフィシャルサイトにて9月12日より販売開始。アナログ盤には、収録全4曲+未収録新曲をすべて無料でダウンロードできるページへのID&PASSを封入。


■オフィシャル・サイト:https://www.aidagon.com/
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015
Copyright © CDJournal All Rights Reserved.